朝食付きで6,380円という破格の料金で話題のAZホテル。九州を中心に全国90店舗以上を展開するビジネスホテルチェーンとして、多くの利用者から支持を集めています。
2025年6月に価格改定が実施されましたが、それでも他社と比較して圧倒的な安さを維持しています。
しかし、なぜこれほど安い料金を実現できるのでしょうか。本記事では、AZホテルの低価格戦略の秘密から、実際の特徴、利用者のメリット・デメリットまで詳しく解説します。
ホテル選びで迷っている方、出張や旅行でコストを抑えたい方にとって、AZホテルの真実を知ることで、より賢い宿泊選択ができるはずです。
AZホテルとは?基本情報と会社概要
AZホテルの運営会社と歴史
AZホテルを運営する株式会社アメイズは、1911年に別府観光の父と呼ばれる油屋熊八によって創業された歴史ある企業です。当初は亀の井旅館として開業し、その後1924年に株式会社亀の井ホテルとして法人化されました。
現在のAZホテルブランドが誕生したのは2013年のこと。ファミリーレストランチェーン「ジョイフル」との関係を経て、2013年に株式会社アメイズに社名変更し、「HOTEL AZ」ブランドをスタートさせました。2014年には福岡証券取引所に上場し、現在では資本金約13億円、従業員数1,664名の企業として成長を続けています。
現在の事業規模と展開状況
2025年現在、AZホテルは九州を中心に全国90店舗以上を展開しており、売上高180億円を超える規模まで成長しています。同社は全国300店舗の展開を目標に掲げており、特に中四国地方への進出を強化している段階です。
AZホテルが安い5つの理由
1. 365日同一価格制度の採用
AZホテル最大の特徴は、年間を通して料金が一定という「365日同一価格制度」です。多くのホテルが採用する需要と供給のバランスに応じた価格変動システム(ダイナミックプライシング)とは正反対のアプローチを取っています。
この制度により、繁忙期やイベント開催時、週末でも料金が上がることがありません。ゴールデンウィークや年末年始といった一般的に宿泊料金が高騰する時期でも、平日と同じ料金で利用できるため、利用者にとって予算計画が非常に立てやすいメリットがあります。
2. 郊外・ロードサイド立地戦略
AZホテルは駅前や繁華街ではなく、あえて郊外の幹線道路沿いに立地する戦略を採用しています。この立地戦略により以下の効果を実現しています。
**土地代の大幅削減**:郊外の土地価格は都心部と比較して大幅に安く、初期投資を大幅に抑制できます。これにより、建設費用を削減し、その分を宿泊料金の低価格化に反映させています。
**競合の少なさ**:他の大手ホテルチェーンが参入していない立地のため、価格競争に巻き込まれることなく、安定した宿泊者数を確保できます。
**大型駐車場の確保**:郊外立地の利点を活かし、広大な駐車場を無料で提供できます。車での移動が主な顧客層にとって、このサービスは大きな付加価値となっています。
3. シンプルなサービスと効率的な運営体制
AZホテルは必要なサービスに絞り込み、無駄を徹底的に省いた運営を行っています。朝食は無料バイキング形式で提供し、全室Wi-Fi無料、駐車場無料(普通車)といった基本サービスは充実させつつ、余分な設備投資は避け、必要最小限のアメニティに特化しています。
この効率化により、スタッフの業務負担を軽減し、人件費の削減も実現しています。また、サービス内容をシンプルにすることで、スタッフの教育コストも抑制できています。
4. 独自のホテル管理システムによる業務効率化
最新のホテル管理システムを導入し、予約管理やチェックイン・チェックアウトなどの業務を効率化しています。これにより、フロント業務の効率化と人件費削減を実現し、運営全体のコストダウンにつなげています。
システム化により、24時間有人対応を維持しながらも最小限のスタッフで運営できる体制を構築しています。
5. グループ利用・長期滞在客の重視
建設業界の現場作業員や団体客、長期滞在の利用が多いことも、AZホテルの特徴の一つです。安定した団体利用により、個人客だけに依存せず、低価格でも高い稼働率を維持する仕組みを構築しています。
長期滞在客は一度の清掃やアメニティ交換で複数日分の売上が見込めるため、運営効率の向上にもつながっています。
AZホテルの特徴とサービス内容
料金体系とお得な予約方法
**改定後の料金(2025年6月1日~)**:
– シングルルーム:6,380円(税込)
– ダブルルーム:10,340円(税込)
– ツインルーム:10,560円(税込)
– 2段ベッド:9,240円(税込)
2025年6月1日より価格改定が実施されましたが、365日同一価格制度は継続されています。物価上昇や運営コスト増加により改定となりましたが、他社と比較した価格優位性は維持されています。
客室設備とアメニティ
AZホテルの客室には以下の基本設備・アメニティが完備されています:
**基本設備**:
– テレビ
– 冷蔵庫
– 電気ポット
– ドライヤー
– 全室Wi-Fi・有線LAN無料
**アメニティ**:
– カミソリ
– 歯ブラシ
– タオル、バスタオル
– パジャマ・スリッパ
– リンスインシャンプー
– ボディソープ
必要最小限に絞り込んでいるため、女性向けの特別なアメニティや高級アメニティは期待できませんが、基本的な宿泊に必要なものは揃っています。
朝食バイキングサービスの充実度
AZホテルの朝食バイキングは宿泊者無料で提供され、営業時間は6:00~10:00です。メニューの充実度は価格を考えると非常に満足度が高いと評価されています。
**定番メニュー**:
– 白ご飯、味噌汁
– 焼き魚、納豆、味付け海苔
– パン、生野菜サラダ
– キムチ、高菜、かつお梅
**日替わりメニュー**:
– ウインナー、さば塩焼き
– スクランブルエッグ、厚焼き玉子
– ベーコンなど
**特色**:
– 明太子が取り放題で大盛り提供
– コーヒー・ソフトドリンク飲み放題
特に明太子の取り放題は利用者から高く評価されており、九州のホテルらしい特色あるサービスとなっています。
館内施設とその他のサービス
**無料サービス**:
– 駐車場無料(普通車、大型車は有料2,640円)
– Wi-Fi全室完備
– フロント24時間有人対応
**有料・その他サービス**:
– コインランドリー
– 100円ショップ(フロント横)
– 自動販売機
– ズボンプレッサー(貸出)
– FAX・コピーサービス
– 有料チャンネル(1,000円/1枚)
フロント横に100円ショップがあるのは、長期滞在客や忘れ物をした宿泊客には便利なサービスです。
AZホテル利用のメリット
1. 圧倒的なコストパフォーマンス
朝食付きで6,380円という価格は、価格改定後も同業他社と比較して大幅に安い水準を維持しています。全国のビジネスホテルの客室平均単価が13,907円という中で、AZホテルの価格設定は依然として際立っています。
特に連泊や長期滞在の場合、この価格差は大きな節約効果をもたらします。出張費を抑えたいビジネスマンや、旅行予算を抑えたい個人旅行者にとって、大きなメリットとなります。
2. 予算計画の立てやすさ
365日同一価格制度により、繁忙期でも料金変動がないため、旅行や出張の予算計画が立てやすく、急な宿泊でも安心です。特に年末年始やゴールデンウィーク、夏休みなどの繁忙期に宿泊する場合、通常のホテルと比較して大幅な節約が可能です。
3. 充実した無料サービス
朝食バイキング無料、駐車場無料、Wi-Fi無料という3つの無料サービスは、実質的な価値を大幅に高めています。特に車移動の利用者にとって、都市部では数千円かかる駐車場が無料というのは大きなメリットです。
4. 車でのアクセス良好
ロードサイド立地のため、車でのアクセスが非常に良好で、高速道路のインターチェンジから数分という立地が多くあります。カーナビでの案内も分かりやすく、初めて利用する場合でも迷いにくい立地です。
5. 安定したサービス品質
チェーンホテルとして全店舗で統一されたサービス水準を提供しており、どの店舗を利用しても同じクオリティが期待できます。初めて利用する地域でも安心して宿泊できる安定感があります。
AZホテル利用のデメリット
1. 立地・アクセスの不便さ
郊外立地のため、公共交通機関でのアクセスが不便な場合が多く、駅から離れていることがあります。車を利用しない旅行者や、電車移動が主の出張者には不向きです。
最寄り駅からタクシーを利用する場合、往復で数千円かかることもあり、せっかくの宿泊費節約効果が減少してしまう可能性があります。
2. 防音効果の問題
口コミでは「防音効果が薄く、廊下での会話や隣室の音が気になる」という指摘が多く見られます。特に修学旅行生や団体客の利用時は騒音問題が発生することがあります。
静かな環境で休息したい方や、音に敏感な方には向かない場合があります。耳栓の持参をおすすめする声も多く聞かれます。
3. エアコン調整の制限
全館空調システムのため、個別の室温調整ができないか、調整幅が限定的です。人によっては暑すぎたり寒すぎたりする可能性があります。
特に季節の変わり目や、体調により適温が異なる場合、快適に過ごせない可能性があります。
4. アメニティの最小限化
コスト削減のため、アメニティは必要最小限に抑えられています:
– リンスインシャンプーのみでコンディショナー別途なし
– 女性向けアメニティが不足
– ドライヤーの風量が弱い
特に女性の利用者は、普段使用している化粧品やヘアケア用品の持参が必要になります。
5. 設備の老朽化
一部店舗では設備の古さや清掃不備が指摘されています:
– ベッドシーツの破れ
– 排水の問題
– 壁紙の剥がれ
全店舗で一律の品質が保たれているわけではなく、店舗により差があることは理解しておく必要があります。
6. 夕食の品質と価格バランス
有料の夕食バイキングは品数が少なく、料金に見合わないという評価があります。無料朝食の方が豪華という皮肉な状況も指摘されています。
夕食は外部のレストランを利用する方が満足度は高いという声が多く聞かれます。
競合他社との比較
AZホテルは東横インと類似したビジネスモデルを採用していますが、以下の点で差別化を図っています:
**AZホテルの優位点**:
– 365日同一価格制度
– より安い料金設定
– 大型駐車場の無料提供
– 郊外立地による競合回避
**東横インの優位点**:
– 駅近立地でアクセス良好
– より安定したサービス品質
– 全国的な知名度とブランド力
利用目的や移動手段により、どちらが適しているかは変わってきます。車移動がメインで価格重視の場合はAZホテル、電車移動がメインで利便性重視の場合は東横インという選択が一般的です。
AZホテルがおすすめな人・おすすめしない人
おすすめな人
– 車での移動が主な方
– 宿泊費をとにかく抑えたい方
– 長期滞在や連泊を予定している方
– 基本的なサービスがあれば十分な方
– 朝食付きの宿泊を希望する方
おすすめしない人
– 公共交通機関での移動が主な方
– 高級感や充実したアメニティを求める方
– 静かな環境を重視する方
– 駅近や繁華街での宿泊を希望する方
– サービス品質に厳格な基準を求める方
今後の展望と価格改定の影響
AZホテルは現在90店舗以上を運営し、全国300店舗の展開を目標としています。特に中四国地方への進出を強化しており、ロードサイド戦略を活用した全国展開を進めています。
2025年6月1日に価格改定が実施され、物価上昇や運営コスト増加により値上げとなりましたが、365日同一価格制度は維持されています。他社と比較した価格優位性は継続されており、依然としてコストパフォーマンスの高いホテルチェーンとしての地位を保っています。
まとめ
AZホテルの破格の料金は、365日同一価格制度、郊外立地戦略、効率的な運営システム、シンプルなサービス提供という4つの柱によって実現されています。
車での移動が主で、基本的な宿泊サービスがあれば十分という方にとって、非常にコストパフォーマンスの高い選択肢となっています。
一方で、立地の不便さや防音性の問題、アメニティの簡素さなど、価格の安さと引き換えに妥協すべき点があることも事実です。利用前にこれらのメリット・デメリットを十分理解し、自分の旅行スタイルや出張スタイルに合致するかを検討することが重要です。
今後の全国展開により、より多くの地域で利用できるようになることで、さらに多くの人にとって魅力的な選択肢となることが期待されます。