Back Market(バックマーケット)は、2014年にフランスで設立された世界最大級のリファービッシュ(整備済み)電子機器専門マーケットプレイスです。
2021年に日本に進出してから、新品より大幅に安い価格でiPhoneやスマートフォンを購入できるサービスとして注目を集めています。なぜこれほど安く提供できるのでしょうか。
その理由には、多数の販売業者との提携による価格競争、リファービッシュ品の取り扱い、直接販売方式による中間コスト削減という3つの明確な構造的要因があります。
本記事では、Back Marketが安い理由から、特徴、メリット・デメリット、競合他社との比較まで詳しく解説します。
Back Marketが安い3つの理由
1. 多数の販売業者との提携による価格競争
Back Marketが安価な価格を実現できる最大の理由は、日本だけでも40~50社もの販売業者と提携していることです。これによって激しい価格競争が生まれ、利用者にとってより安い商品を購入できる仕組みが作られています。
同社はマーケットプレイス形式を採用しているため、複数の業者が同じ商品を出品することで自然に価格が下がる構造となっています。楽天市場やAmazonと同じように、出品者同士の競争によって価格が決まるため、利用者は最も安い商品を選ぶことができます。
2. リファービッシュ品(整備済製品)の取り扱い
Back Marketで扱っているのはリファービッシュ品と呼ばれる整備済製品で、これが新品よりも安い第二の理由です。リファービッシュ品とは、中古品として回収された電子機器を専門家が検査・クリーニング・修理し、すべての機能で正常な動作が確認された製品のことです。
Back Market Japan代表の山口亮氏は「基本的には、中古品よりも品質が高く、新品よりも安い、いいとこどりをした製品」と説明しています。新品と比べて20~40%安い価格で購入できるのが特徴です。
3. 直接販売方式による中間コストの削減
第三の理由は、Back Market自身が商品の修理や再生を行わず、信頼できる業者と顧客を直接つなぐマーケットプレイスとして機能していることです。この方式により中間コストを削減し、より安い価格で商品を提供できています。
同社は販売手数料として約10%の手数料を徴収し、プラットフォーム利用料として1%未満の手数料を販売業者から収集するビジネスモデルを採用しています。在庫を持たないため、管理費用や保管コストがかからないのも価格を抑えられる要因の一つです。
Back Marketの特徴とビジネスモデル
Back Marketは「製品の在庫を持たないマーケットプレイス」として運営されており、リファービッシュ製品版の楽天市場やAmazonと言えばその役割が理解しやすいでしょう。同社のミッションは「リファービッシュを利用者の第一の選択肢にすること」で、循環型経済の実現を目指しています。
品質管理システム
Back Marketでは独自の品質管理システムを採用しており、以下の4段階でリファービッシュ品の信頼性を保証しています:
- 厳格な出品者審査:約30%の出品希望者しか通過しない厳しい品質チェック
- 専任マネージャー制:利用者体験向上のための取り組み実施
- 品質スコアアルゴリズム:20のKPIで評価された最高品質の製品を優先表示
- ミステリーショッパー制:ランダム購入による品質チェック
商品グレード分類
商品は外観の状態に応じて3つのグレードに分類されています:
- Aグレード:完璧なコンディション(20cm離れた位置から確認できない程度の軽微な傷)
- Bグレード:完璧なコンディション(50cm離れた位置から見える程度の軽微な傷)
- Cグレード:経年劣化あり(性能に影響しない範囲の目立つ傷や凹み)
Back Marketのメリット
価格面でのメリット
実際の価格例として、iPhone 13 Pro(シエラブルー、128GB)の市場価格比較では、Back Market(Aグレード)が83,000円に対し、イオシス(Aグレード)が112,000円、にこスマ(Aグレード)が106,000円となっており、他の競合サービスと比較して一回り安い価格設定となっています。
新品価格と比較すると、20~40%程度安く購入できるため、コストパフォーマンスを重視する方には大きなメリットがあります。特に最新モデルの前世代機種では、性能は十分でありながら大幅に安く購入できる場合が多いです。
充実した保証制度
Back Marketの保証制度は中古品販売業界でも特に充実しており、以下のような保証が用意されています:
- 30日間の返金保証:商品到着後30日以内であれば、理由を問わず返品・交換・返金が可能
- 1年間の動作保証:技術的故障が発生した場合の修理・交換保証
- 赤ロム永久保証:通信制限がかかった場合の全額返金または交換
- バッテリー容量保証:全商品でバッテリー容量80%以上を保証
豊富な商品ラインナップ
iPhoneだけでなく、Android端末、iPad、MacBook、その他の電子機器まで幅広く取り扱っています。各商品について複数の販売業者が出品しているため、価格や状態を比較して選ぶことができます。
Back Marketのデメリット
品質のバラつき
Back Marketの最大のデメリットは、販売業者によって商品の品質にバラつきがあることです。マーケットプレイス形式のため、業者ごとにリファービッシュの基準や技術レベルが異なり、同じグレード表記でも実際の商品状態に差が生じることがあります。
例えば、同じAグレードでも「ほぼ新品同様」のものから「細かい傷が目立つ」ものまで幅があり、届いてみるまで正確な状態が分からないという不安があります。
実物確認の不可能性
オンライン専用のため、購入前に実物を確認できません。競合のイオシスやゲオモバイルのような実店舗がないため、「届いてみるまで分からない」というリスクがあります。特に外観の状態については、写真だけでは判断が難しい場合もあります。
バッテリー情報の不透明性
「80%以上保証」とされていますが、購入前に具体的なバッテリー容量が分からない場合が多いのも課題です。実際に購入した利用者からは「85%で、できれば90%欲しかった」という声も聞かれます。バッテリーの劣化状況は使用感に大きく影響するため、事前に知りたい情報の一つです。
トラブル対応の複雑さ
マーケットプレイス形式のため、トラブル発生時の対応が販売業者によって異なり、Back Marketを経由するため時間がかかることがあります。特に海外業者との取引では、言語の壁や対応の遅延が問題となる場合があります。
競合他社との比較
イオシスとの比較
イオシスは創業25年以上の老舗中古販売店で、全国に実店舗を展開しています。実物確認が可能で品質が安定している一方、バッテリー容量の記載がないというデメリットがあります。価格面ではBack Marketの方が一般的に安価です。
イオシスの利点は、店舗で直接商品を確認できることと、長年の実績による信頼性の高さです。一方、Back Marketは価格の安さと充実した保証制度が魅力となっています。
にこスマとの比較
にこスマは伊藤忠商事の子会社が運営する信頼性の高いサービスで、25項目以上のチェックと360度画像の掲載、バッテリー容量の明記が特徴です。品質管理は徹底されていますが、価格はBack Marketよりもやや高めの設定となっています。
にこスマの強みは、大手商社系列による安心感と詳細な商品情報の提供です。バッテリー容量が事前に分かることで、購入後の満足度も高い傾向にあります。
ゲオモバイル
全国展開するゲオモバイルは実店舗での動作確認が可能ですが、店舗によって在庫状況や対応に差があるのが特徴です。レンタル事業で培ったノウハウを活かした中古品販売を行っていますが、価格競争力ではBack Marketに劣る場合が多いです。
利用者層と市場動向
Back Marketの利用者層は従来の中古品市場とは大きく異なります。同社の利用者の70%が20~30代の若年層で、3分の1が女性です。これは一般的な中古品利用者が40~50代であることと対照的で、新しい市場を開拓していることが分かります。
日本市場での成長
日本における売上は毎年3~4倍のペースで伸びており、2025年上半期の販売データでは、iPhone 13がiPhone SEを抑えて初めて1位にランクインしました。これは1年間で最大38.9%の価格下落を記録したことが要因とされています。
購入検討層の拡大
市場調査によると、高品質で安全なら中古スマホの購入を検討したい消費者は64.7%に上り、特に若年層(18~34歳)では63%がリファービッシュ品の購入を検討しています。環境意識の高まりとともに、リファービッシュ品への関心も増加傾向にあります。
利用時の注意点と対策
購入前の確認事項
- 販売業者の評価確認:レビューや評価スコアを必ずチェック
- グレードの理解:外観状態の許容範囲を事前に把握
- 保証内容の確認:具体的な保証条件を理解
購入後の対応
- 30日以内の徹底チェック:動作確認と外観チェックを迅速に実施
- 問題発見時の迅速対応:不具合を発見した場合は即座にサポートに連絡
- 証拠の保全:写真撮影など問題の証拠を残す
トラブル回避策
より安全に購入するためには、Aグレード商品の選択や有料バッテリーオプションの検討、国内業者の優先選択などが効果的です。また、初回購入時は比較的安価な商品で様子を見るのも良い方法です。
まとめ
Back Marketが安い理由は、多数業者との提携による価格競争、リファービッシュ品の性質、直接販売方式による中間コスト削減の3つの構造的要因にあります。
充実した保証制度と新品比20~40%安の価格設定が魅力である一方、品質のバラつきや実物確認の不可能性というデメリットもあります。
購入を検討する際は、販売業者の評価確認やグレードの理解、保証内容の把握が重要で、特に30日間の返品保証を活用した迅速な動作確認が推奨されます。競合他社と比較して価格面では優位性がある一方、品質の安定性ではイオシスやにこスマに劣る面もあるため、個人のニーズとリスク許容度に応じた選択が必要です。
環境への配慮と経済性を両立できるリファービッシュ品は、今後さらに注目が集まると予想されます。